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専門医に聞く 治療最前線 「ガンと遺伝」

――がんは遺伝子の病気ともいわれます。
われわれの体の中には約三万五千もの遺伝子があります。各細胞に遺伝子が詰まっているわけですが、例えば肝臓には肝臓の働きに関連する、皮膚には皮膚の細胞に必要な遺伝子だけが働いています。どんな病気も、その遺伝子に異常が起きて発症します。がんも同様です。
遺伝子は人間のさまざまな情報を集めたセットで、タンパク質をつくる指令を出しています。その司令塔に異常が起きると、本来できるべきタンパク質ができなかったり、違うタンパク質ができてしまう。すると、肝臓であれば肝臓の細胞の働きが変わってしまうわけです。

――がんに関係する遺伝子はたくさんありますか。
約三百といわれます。このうち、十種類くらいの遺伝子が、さまざまな環境的・遺伝的要因によって異常が蓄積されると、発症することが最近分かってきました。単一の遺伝子の異常だけでがんになるのはまれで、遺伝子の異常が複合して起きるのが通常です。

――親から子への遺伝はまれなわけですね。
遺伝性に発生する腫瘍は三十種類ほどが分かっています。大腸、乳腺が有名ですが、甲状腺などでもあります(表参照)。しかし、数は非常に少なく数%くらい。遺伝との関係の研究が進んでいる大腸には、家族性大腸腺腫症のAPC遺伝子や遺伝性非ポリポーシス大腸がんのMLH1遺伝子などが原因遺伝子として知られています。

――親に遺伝子異常があれば、必ず子どももがんになるのですか。
遺伝子は父、母から受け継いでいて必ず対になっています。そのため、片方が正常でそこから正しい指令が出されていれば、正常な働きをしてくれるわけです。  両方に異常があって初めてだめになる。正常な人は二つの遺伝子がともに異常をきたさなければ、がんにならない。しかし、遺伝性のがんの人の場合、始めから一つの遺伝子は異常だから、対になっているもう一方の正常遺伝子に異常が起きるとがんになるのです。

――診断された人は辛(つら)いですね。
がんが発症した本人にとっては、遺伝性かどうかはどうしようもないことともいえます。しかし、お子さんらにとって遺伝的に発症の危険があるかどうかを知ることは重要なことです。ただ、100%受け継ぐわけではありません。
遺伝子診断ができるようになり、検査で異常遺伝子を受け継いでいることが分かれば、普通の人よりかかりやすいわけですから、早くから定期的に検診を受けるなどの対応が可能です。知らなければ早く命を落としますが、知っていれば普通に生活できるのです。前向きに受け止められるように家族性腫瘍センターでは、カウンセリングに力を入れています。

――遺伝性のがんは、さらに見つかるのでしょうか。
遺伝性のがんでないにしても、家族の中にがんの人が多い家系というのは、やはり遺伝子に、どこか弱いところがあるのではと考えられます。というのも、人の体の中には細胞の異常を、察知して排除する機構がたくさんあります。その防御システムをかいくぐって、がんが生き抜くことは実は大変なことです。
そうした観点からすると、遺伝子のどこかに弱いところがあるために、家系的にがんができやすい素因があるのではとも考えられます。親兄弟、祖父母らに多くがんの患者さんがいる場合は、普通よりリスクが高いと考え、生活習慣を守って過ごすべきでしょう。

――具体的には。
禁煙や、緑黄野菜の摂取とか。運動も大切です。ご家族にがん患者さんがいる場合は、四十歳から検診を受けることなどが、がんで早死にしないためには最低限必要ではないでしょうか。


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